オウンドメディアとは?運用のメリット・デメリットや事例を解説

この記事のポイント
- オウンドメディアは自社で保有して情報を発信するメディアで、AI検索が広がる現在は、自社独自のデータや専門知識の提供が求められています。
- 運用のメリットは見込み顧客との接点や記事の資産化で、デメリットは成果が出るまでの期間や制作コストなどの負担です。
- 失敗事例に共通する原因は、読者の役に立つ目的よりも量産や自社の都合を優先した点で、編集長と工程ごとの担当を決めた運用体制が対策になります。
オウンドメディアは、自社や商品の魅力をユーザーに伝え、顧客にアプローチする有効な手段です。ブランド形成や顧客獲得のためにはオウンドメディアが効果的であるものの、詳細や立ち上げ方法について分からない方は多いのではないでしょうか。
今回は、オウンドメディアの概要・目的と、運用に際してのメリット・デメリットを解説します。また、オウンドメディアの参考事例や、運営を始める際のポイントも詳しく解説するため、オウンドメディアのことを詳しく知りたい方は参考にしてください。
1.オウンドメディアとは?
オウンドメディアとは、自社が所有・運営を行うメディアのことです。具体的には、自社ホームページ・ブログ・X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSアカウントを指します。
オウンドメディアは、デジタルマーケティングを行う際に重要視される「トリプルメディア」の考え方を構成する要素の1つです。トリプルメディアは、「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」の3つに区分されています。それぞれの分野を連携させることで、マーケティングにおいて強力な効果を発揮します。
1-1.オウンドメディアの目的
オウンドメディアを運営する目的は、主に下記の3つです。
- 潜在顧客と見込み顧客の獲得
- 顧客ロイヤリティの向上に伴う優良顧客の獲得
- 自社ブランディングの向上
潜在顧客や見込み顧客にとって有益な情報を配信することで、自社商品に対して興味を持ってもらい、アクションを促すことが可能です。また、上質な情報を配信し、自社に対する信頼や愛着を持ってもらうことができれば、顧客ロイヤリティの向上にもつながります。
1-2.ペイドメディア・アーンドメディアとの違い
トリプルメディアを構成するオウンドメディア・ペイドメディア・アーンドメディアは、相互作用によって大きな広告効果をもたらします。下記は、トリプルメディアの各分野についてまとめた表です。
| オウンドメディア | |
|---|---|
| 定義 | 情報の発信 |
| 媒体・経路 | 自社メディア(ホームページ・ブログ・SNSアカウントなど) |
| 役割・目的 | ・潜在顧客と見込み顧客への情報配信 ・ペイドメディアへのコンテンツ配信 ・アーンドメディアとの交流 |
| ペイドメディア | |
|---|---|
| 定義 | 集客・仲介 |
| 媒体・経路 | 有料広告(ディスプレイ広告・リスティング広告・テレビCMなど) |
| 役割・目的 | ・不特定多数へ向けた情報配信 ・オウンドメディアへの誘導 ・新たなアーンドメディアの形成 |
| アーンドメディア | |
|---|---|
| 定義 | 情報の拡散 |
| 媒体・経路 | ユーザーの口コミ(顧客が発信するSNSアカウント・口コミ投稿など) |
| 役割・目的 | ・他者発信による任意の情報を拡散 ・オウンドメディアへの流入 |
オウンドメディアが自社発信であることに対し、アーンドメディアは他者発信です。また、オウンドメディアは長期的で受信者を限定していますが、ペイドメディアは短期的で受信者を選ばない特徴があります。
1-3.オウンドメディアとコーポレートサイトの違い
オウンドメディアとコーポレートサイトは、想定する読者と掲載する情報が異なります。コーポレートサイトは、社名やサービス名をすでに知っている取引先、株主、求職者に向けて、会社概要や事業内容、IR情報などの公式情報を伝えるサイトです。一方のオウンドメディアは、自社をまだ知らない見込み顧客に向けて、仕事や生活の悩みを解決する記事を継続して発信します。
2つのサイトの違いは、目的、主な読者、掲載する情報、更新頻度、評価する指標という5つの観点で整理できます。下記は、オウンドメディアとコーポレートサイトを5つの観点で比べた表です。
| 比較の観点 | オウンドメディア | コーポレートサイト |
|---|---|---|
| 目的 | 見込み顧客との接点づくり | 企業の公式情報の提供 |
| 主な読者 | 自社をまだ知らない見込み顧客 | 取引先、株主、求職者 |
| 掲載する情報 | 読者の悩みを解決する記事 | 会社概要、事業内容、IR情報 |
| 更新頻度 | 記事を継続して追加 | お知らせや実績の追加が中心 |
| 評価する指標 | 検索流入数、記事経由の問い合わせ数 | 指名検索からの訪問数、採用応募数 |
オウンドメディアは、コーポレートサイトの中にコラムを設ける方法と、別のドメインで独立したメディアを立ち上げる方法のどちらでも運用できます。どちらの方法を選ぶ場合も、会社情報を探す訪問者と悩みの解決策を探す読者では求める情報が違うため、ページの役割を分けて設計しましょう。たとえば、コラム記事の末尾にサービスページへのリンクを置くと、記事で課題を知った読者を自社の公式情報へ案内できます。
2.AI時代におけるオウンドメディアの役割の変化
AIを使った情報収集が広がる現在、オウンドメディアには、自社独自のデータや専門知識を提供する役割が求められています。株式会社ITコミュニケーションズとB2Bマーケティング株式会社の共同調査では、BtoBの製品やサービスの検討段階で収集した情報源として、各種Webメディアが49.3%で最多となり、提供企業のWebサイトが35.4%で続きました。
(出典:株式会社ITコミュニケーションズ「共同調査『BtoB商材の購買行動に関する実態調査レポート2025』」)
一方、検索結果にAIの要約が表示されると、記事がクリックされる機会は減ります。Ahrefsの調査では、AI Overviews(AIによる概要)が表示された場合の検索1位のクリック率の低下率が、日本の情報収集型キーワードで2025年12月の38%から2026年6月には62.7%へ拡大しました。
(出典:Ahrefs「AI 概要で Google 検索 1 位の CTR が半年で激減、日本 クリック率が − 62.7% に減少」)
Googleは生成AI検索向けのガイドで、既存コンテンツの要約ではなく、独自の視点を持つコンテンツの作成を勧めています。自社の調査結果や担当者の知見など、他社のサイトにない情報を記事に含めましょう。
3.オウンドメディアを運用するメリット
オウンドメディアを運用するメリットは、集客、資産性、採用、情報発信の主導権という4つの面に表れます。広告やSNSと異なり、自社で保有するメディアは掲載内容と公開期間を自社で決められる点が特徴です。ここでは、オウンドメディアを運用するメリットを4つに分けて解説します。
3-1.見込み顧客との接点を作れる
オウンドメディアを運用すると、自社をまだ知らない見込み顧客と検索を通じて接点を作れます。見込み顧客が課題に気づいた段階で検索する言葉は、悩みを表す言葉や課題に関する用語です。たとえば、勤怠管理システムを扱う企業が残業時間の集計方法を解説する記事を公開すると、集計に悩む人事担当者が記事を読み、運営企業の存在を知ります。
検討の初期段階で役立つ情報を提供した企業は、比較や問い合わせの候補に入る可能性があります。記事の末尾に資料請求やメールマガジン登録の案内を置き、記事の閲覧後も読者との関係を継続できるようにしましょう。
3-2.公開したコンテンツが資産として残る
オウンドメディアで公開した記事は、掲載を続ける限り読者を集める資産として残ります。リスティング広告は出稿を止めると表示されなくなりますが、検索結果に表示された記事は、公開後も追加の掲載費をかけずに流入を得られる点が利点です。記事が増えると、対応できる検索キーワードの数も増えます。
蓄積した記事は、営業資料やメールマガジン、SNS投稿の素材としても再利用できます。たとえば、顧客からよく受ける質問への回答を記事にまとめると、営業担当者が商談後のフォローで記事のURLを送る使い方も可能になります。ただし、資産として機能するのは情報が正確な記事に限られるため、公開後も定期的に記事の見直しが必要です。
3-3.採用候補者に自社の雰囲気を伝えられる
オウンドメディアは、求人票では伝えきれない自社の雰囲気を採用候補者に伝える手段になります。求人票に書ける情報は、仕事内容や給与、勤務地などの条件が中心です。オウンドメディアで社員インタビュー、1日の仕事の流れ、プロジェクトの経緯を記事にすると、採用候補者は働く人の考え方や職場の様子を応募前に確認できます。
入社後の姿を想像できる情報は、採用候補者が自分に合う会社かを判断する材料です。採用を目的とする場合は、職種別の記事を用意し、記事から募集要項のページへ移動できるリンクを設置してください。
3-4.発信する情報を自社でコントロールできる
オウンドメディアでは、掲載する内容、表現、公開時期、掲載期間を自社で決められます。広告は媒体の審査や掲載枠の制約を受け、SNSはプラットフォームの仕様変更の影響を受けます。一方で自社で保有するメディアは、文字数や図表の使い方に外部の制限がなく、製品の仕様や導入手順を詳細に説明できる場です。
ただし、情報を自社で管理できる分、内容の正確さに対する責任も運営企業が負います。料金の改定やサービス内容の変更があった際は、該当する記事をすぐに修正できる体制を整えましょう。
4.オウンドメディアのデメリット・注意点
オウンドメディアにはメリットだけでなく、成果が出るまでの期間、制作コスト、更新の継続、専門知識という4つの負担があります。メリットだけを見て立ち上げると、成果が出る前に予算や人員が尽きる事態になりかねません。ここでは、オウンドメディアのデメリットと注意点を4つに分けて解説します。
4-1.成果が出るまでに時間がかかる
オウンドメディアは、記事を公開してから検索結果の上位に表示されるまでに時間がかかり、短期間では成果が出にくい施策です。Google検索セントラルの「SEOスターターガイド」では、サイトの変更が検索結果に反映されるまでに、数時間かかる場合も数か月かかる場合もあると説明しています。
(出典:Google 検索セントラル「Google 公式 SEO スターター ガイド」)
また、Ahrefsが2025年に公開した調査では、2023年10月に作成された、本文のある英語コンテンツの200万URLのうち、1年以内にGoogle検索の上位10位に入ったのは6.11%でした。日本語サイトにそのまま当てはまる数値ではありませんが、記事を公開しても短期間で上位表示できるとは限らないことが分かります。
(出典:Ahrefs「How Long Does It Take to Rank in Google? And How Old Are Top Ranking Pages?」)
立ち上げ時は、結果につながるまでに長期間かかることを前提に計画と予算を組みましょう。
4-2.記事を作り続けるためにコストがかかる
オウンドメディアは、記事を1本作るたびに人件費や外注費が発生します。記事の制作は、キーワードの選定、構成を決める設計書の作成、執筆、校正、CMSへの入稿という複数の工程に分かれた作業です。当記事も、設計書の作成、本文の執筆、校正と事実確認の工程を経て公開しています。設計書の作成には3時間程度、執筆と確認作業にも2時間以上の工数がかかりました。
コストは記事の本数に応じて増えるため、月間の制作本数と1本あたりの作業時間を立ち上げ前に見積もることが必要です。社内で制作する場合も、担当者が本来の業務に充てられた時間を費用として計算に入れましょう。
4-3.更新を止めると効果が徐々に低下していく
オウンドメディアは、更新を止めると記事の情報が古くなり、検索順位と流入が徐々に下がる場合があります。料金や制度、ツールの画面は、時間の経過とともに変わる情報です。古い情報が残った記事は読者の疑問に正しく答えられなくなり、新しい情報を掲載した他社の記事のほうが上位になってしまう場合があります。
公開済みの記事は、Google Search Consoleで順位とクリック数の推移を定期的に確認し、下がり始めた記事から内容を更新しましょう。当記事も、2022年に公開した記事を2026年時点の情報に合わせて書き直しています。
4-4.効果を高めるためには専門知識が必要になる
オウンドメディアの効果を高めるには、SEOの専門知識が必要です。検索流入を主な集客手段にする場合、キーワードの選定、検索意図に沿った構成、内部リンクの設計、表示速度などの技術面の調整が成果を左右します。
SEOの知識がないまま記事を増やした場合に起きやすい問題は、検索されないテーマの記事や内容が重複する記事の増加です。Googleは、検索順位の操作を主な目的として大量のページを生成する行為をスパムと定めています。ポリシーに反する運用を避けるためにも、担当者がGoogle検索セントラルの公式ドキュメントを確認し、社内に知見がない場合は専門会社への相談を検討しましょう。
5.オウンドメディアの失敗事例
オウンドメディアの失敗には、読者の役に立つという目的よりも、運営企業の都合を優先したという共通点があります。失敗につながる主な原因は、下記の5つです。
- PVや検索順位、記事数などの短期的なKPIを優先し、読者に役立つ記事を作る目的を見失う
- 記事制作を専門性のない第三者に委ね、校正や監修をしない
- 運営企業が責任を持って記事の内容を確認しない
- 記事の品質よりもキーワードの網羅や量産を優先する
- 自社の知見やデータで信頼を得ることよりも、自社に都合のよい情報の発信を目的にする
Googleは、検索順位の操作ではなくユーザーにメリットをもたらすことを目的に作られた、有用で信頼できる情報を上位に掲載する方針を示しています。ここでは、オウンドメディアの失敗事例を4つ紹介し、各事例から得られる教訓を解説します。
5-1.WELQ(DeNA)
WELQは、DeNAが運営していた健康・医療情報サイトで、専門家の監修がないまま誤った内容の記事を大量に公開したとして批判を受け、2016年11月29日に記事が非公開になりました。他サイトの文章を転用して記事を量産していた疑いも指摘され、DeNAは同年12月1日、WELQを含む9サイトの全記事を非公開にしています。
第三者委員会の調査報告書の概要では、外部から問題視されたWELQの記事19本のうち、薬機法に違反する可能性のある内容を含む記事が8本と認定されました。医療や健康のように読者の生活へ影響する分野では、専門家による監修と公開前の内容確認が欠かせません。
(出典:INTERNET Watch「DeNA、「MERY」を除くキュレーション9サイトの全記事を公開停止、守安功社長が謝罪文」)
5-2.Spotlight(サイバーエージェント)
サイバーエージェントが運営するメディアのSpotlightでは、ライターが一般ブロガーの料理写真を無断で記事に使用した問題が2015年4月に発覚しました。サイバーエージェントは該当の写真を削除し、著作権などのルールを守った執筆をライターへ徹底すると説明しています。
(出典:ITmedia NEWS「サイバーエージェントのバイラルメディア『Spotlight』に写真盗用記事」)
外部のライターへ執筆を任せる場合は、画像や文章の引用ルールを文書で共有し、運営企業が公開前に確認する工程を設けることが大切です。
5-3.ギャザリー(リクルートライフスタイル)
ギャザリーは、リクルートライフスタイルが2014年9月に開設した生活情報のキュレーションメディアで、2017年5月31日にサービスを終了すると発表しました。約6万件の記事のうち約1万6,000件を2016年末に非公開とし、その後も再公開には至りませんでした。リクルートライフスタイルは終了の理由を、一次権利者の権利保護を図ることが現状では困難なためと説明しています。
(出典:ITmedia NEWS「リクルート、キュレーションメディア『ギャザリー』終了 『一次権利者の権利保護が現状困難』」)
投稿型のメディアは記事数を増やしやすい反面、画像や文章の権利関係を運営企業が1本ずつ確認する負担が大きくなります。
5-4.SugarString(ベライゾン・コミュニケーションズ)
SugarStringは、米国の通信会社ベライゾンが2014年に立ち上げたテクノロジー分野のニュースサイトで、開設から約2か月で閉鎖されました。編集長がライターを募集する際、通信の監視とネット中立性の2つを扱わない話題として伝えていたことが報じられ、メディア関係者から批判が集まりました。2つの話題は、どちらもベライゾン自身が当事者となっていた問題です。
(出典:Contently「Verizon’s SugarString Is Dead. Here’s What It Can Teach Us」)
自社に不利な話題を避け、都合のよい情報だけを発信するメディアは、読者の信頼を失うおそれがあります。
6.オウンドメディアの成功事例
オウンドメディアで効果を上げるためには、他社の成功事例を分析することが重要です。ここでは、オウンドメディアの参考事例を紹介します。
6-1.SUUMOのオウンドメディア「SUUMOジャーナル」
SUUMOジャーナルは住まいに関する情報やコラムを配信しているサイトです。購入・賃貸・リフォームなどのカテゴリー別にコンテンツ設計を行い、ユーザーが知りたい情報にアクセスしやすいサイト構成となっています。
記事は2日に1回は更新されており、圧倒的なページ数でオウンドメディアの資産化に成功しています。
6-2.サイボウズのオウンドメディア「サイボウズ式」
サイボウズ式は、チームワークや働き方、生き方に関する情報を発信するサイトです。 マネジメントや人事制度、多様性などをテーマに、インタビューやコラムを配信しています。
組織や仕事にまつわる身近な悩みを取り上げ、読者が自分の働き方やチームのあり方を考えるきっかけを提供しています。サイボウズの社内制度や社員の考えも紹介しており、企業の価値観を読者に伝えるオウンドメディアの事例です。
6-3.マイナビ保育士のオウンドメディア「ほいくらし」
ほいくらしはマイナビ保育士が運営を行う、保育士と子育てに役立つ情報発信サイトです。最新の保育ニュースや、保育士に必要な基礎知識・子どもとの遊び方を配信しています。専門家へのインタビューや、特集記事も豊富です。
ターゲットを保育士に絞ることで、ユーザーニーズに応じた満足度の高いオウンドメディアとなっています。
7.オウンドメディアの始め方
オウンドメディアは、目的の設定から効果の計測まで、順序を決めて立ち上げると手戻りを減らせます。サイトの構築を先に進めると、目的に合わない設計になり、公開後に作り直す事態になりかねません。ここでは、オウンドメディアの始め方を7つのステップに分けて解説します。
7-1.目的とKGI・KPIを決める
オウンドメディアを始める際は、最初に運用の目的と、達成度を測るKGIとKPIを決めます。KGIは最終的な目標を示す指標、KPIはKGIに至る途中経過を測る指標です。問い合わせの獲得が目的の場合は、KGIを月間の問い合わせ件数、KPIを検索流入数や資料請求ページへの遷移数に設定します。
KPIは、立ち上げからの期間に合わせて変更します。公開直後は検索流入が少ないため、初期は記事の公開本数や検索結果での表示回数を追い、流入が増えた段階で問い合わせ件数へ重点を移すと、進み具合を実態に沿って評価できます。
7-2.ターゲットとする読者像を決める
目的を決めた後は、記事を届けたい読者像を具体的に決めます。読者像は、業種、職種、役職、抱えている課題、情報を探す場面まで言葉にしてください。「従業員50名の製造業で、採用サイトの応募数に悩む人事担当者」のように具体的に設定すると、扱うテーマと記事の難易度を判断しやすくなります。
読者像は想像だけで作らず、既存顧客へのヒアリングや営業担当者が受けた質問をもとに作成しましょう。実在する顧客の声を反映すると、読者が検索時に使う言葉と記事の表現をそろえられます。
7-3.記事のテーマを決める
記事のテーマは、読者が検索するキーワードと、自社が専門的に答えられる領域が重なる範囲から選びます。Googleキーワードプランナーなどのツールで検索回数を調べ、読者の悩みを表すキーワードを一覧にしてください。一覧にしたキーワードは、用語の意味を調べる段階、解決策を比べる段階、依頼先を選ぶ段階に分類します。
1つの記事で狙うキーワードは1つに絞り、内容が重なる記事を作らないことが原則です。
7-4.サイトを構築する
サイトは、担当者が自分で記事を更新できるCMSを使って構築します。CMSは、専門的なコードを書かずに記事の作成と公開ができる管理システムで、代表例はWordPressです。構築時には、コーポレートサイトと同じドメインの配下に置くか、別のドメインを取得するかを決めてください。
構築の段階で、カテゴリの分け方、記事ページのデザイン、スマートフォンでの表示、アクセス解析ツールの設置まで済ませます。公開後にカテゴリやURLを変えると検索結果の評価に影響する場合があるため、記事のテーマ一覧をもとに先に設計してください。
7-5.掲載するコンテンツを作成する
サイトの構築後は、テーマ一覧に沿って記事を作成します。記事の制作工程は、構成を決める設計書の作成、執筆、校正、入稿の4つです。設計書の段階で読者の疑問、見出し、参照する資料を決めると、執筆者による品質の差を小さくできます。
記事には、自社の事例、独自に集計したデータ、担当者の知見など、他社のサイトにない情報を1つ以上含めることが大切です。数値や制度を記載する際は、公的機関などの一次情報を確認し、出典を明記します。
7-6.問い合わせ導線を設計する
オウンドメディアには、記事を読んだ読者が次の行動に移れるよう、問い合わせまでの導線を設計します。導線とは、記事からサービスページ、資料請求フォーム、問い合わせフォームへ読者を案内する経路です。用語を解説する記事には関連資料のダウンロードを、サービスの選び方を解説する記事には問い合わせフォームを案内するなど、読者の検討段階に合わせて案内先を変えましょう。
案内は記事の末尾に加え、本文の内容と関係が深い位置にも設置します。フォームの入力項目が多いと途中で離脱する読者が増える場合があるため、項目は氏名や連絡先など必要な範囲に絞ります。
7-7.公開した記事の効果を計測する
記事の公開後は、Google Search ConsoleとGoogle アナリティクスで効果を計測します。Google Search Consoleでは検索結果での表示回数、クリック数、掲載順位を確認でき、Google アナリティクスでは記事の閲覧数や問い合わせに至った件数を確認できます。
計測は月に1回など時期を決めて実施し、KPIとの差を記録しましょう。表示回数が多くクリック数が少ない記事はタイトルを見直し、順位が下がった記事は情報を更新するなど、数値に応じて改善内容を決めます。
8.オウンドメディアの運用体制の作り方
オウンドメディアの運用体制は、決定権を持つ責任者、工程ごとの担当者、外部の協力先という3つの要素で作ります。担当と権限が曖昧なまま運用を始めることは、確認待ちで公開が遅れ、更新が止まる原因です。ここでは、オウンドメディアの運用体制の作り方を3つに分けて解説します。
8-1.最終決定権を持つ編集長を決める
運用体制を作る際は、掲載内容の最終決定権を持つ編集長を最初に決めます。編集長は、メディアの方針、扱うテーマ、記事の公開可否を判断する責任者です。決定権を持つ人が複数いると、記事ごとに修正の方向が変わり、公開までの期間が延びる原因になります。
編集長には、自社の事業とサービスを理解し、記事の内容が事実に合っているかを判断できる人を選びましょう。兼務の場合は、編集長が確認に充てる時間を週単位で確保し、すべての記事が公開前の確認を通る流れにします。編集方針や表記のルールを文書にまとめると、担当者が代わった際も引き継ぎやすくなります。
8-2.工程ごとに担当を決める
記事の制作は、設計書の作成、執筆、校正、入稿といった工程ごとに担当者を決めます。工程ごとに担当を分けると、作業の抜けや確認の漏れが起きた箇所を特定できます。担当を決める主な工程は、下記の5つです。
- キーワードの選定と効果測定
- 設計書の作成
- 執筆
- 校正と事実確認
- CMSへの入稿
少人数で運用する場合も、執筆と校正は別の担当者を付けましょう。執筆者本人は自分の文章の誤りに気づきにくく、第三者が読むことで事実の誤りや分かりにくい表現を見つけられます。各工程の締め切りと担当者は一覧表にまとめ、関係者全員が進み具合を確認できる状態にします。
8-3.社内のリソースが足りない工程を外注する
社内の人員や知識が足りない工程は、外部の専門会社やライターへ外注します。外注の対象になる工程は、キーワードの調査、記事の執筆、サイトの構築、SEOに関する技術的な助言などです。
メディアの方針の決定と公開前の内容確認は、外注せずに自社で担当してください。自社の事業に関する情報の正否は社内の担当者でなければ判断できず、公開した記事の責任は運営企業が負うためです。依頼前に、対応範囲、納品物、修正の回数、成果の報告方法を確認し、複数の会社を比較検討しましょう。
オウンドメディアについてのよくある質問と回答(Q&A)
オウンドメディアの立ち上げを検討する段階では、記事の内容や本数、SNSや生成AIとの関係について疑問が生じます。ここでは、オウンドメディアについてのよくある質問を4つ取り上げて回答します。
- Q. これからオウンドメディアを運用する場合、どういった記事を作るべき?
初めは、自社のサービスと関係が深く、問い合わせに近い読者が検索するテーマの記事から作成してください。サービスの選び方、費用、導入手順などを解説する記事は、検討が進んだ読者に読まれます。
- Q. 月に何本程度オウンドメディアに記事を投稿すればよい?
投稿本数に決まった基準はなく、品質を保って継続できる本数を設定してください。Googleは、検索順位の操作を主な目的に大量のページを生成する行為を、スパムと定めています。公開した記事の順位と流入を確認し、新規記事の作成と既存記事の更新に時間を配分しましょう。
- Q. SNSを運用していればオウンドメディアを作らなくてもよい?
SNSを運用していても、検索から読者を集めたい場合や、詳細な情報を蓄積したい場合はオウンドメディアが必要です。SNSの投稿は時間の経過とともに読まれにくくなり、表示の仕組みはプラットフォームの仕様に左右されます。SNSは、記事の公開を知らせる経路として併用してください。
- Q. 生成AIで記事を作成しても問題ない?
生成AIを記事の作成に使うこと自体は問題ありませんが、生成した文章を確認せずに大量に公開する運用は避けましょう。Googleは、生成AIツールを使い、ユーザーにとっての価値を付加せずに大量のページを生成する行為を、スパムの例に挙げています。生成AIを使う場合も、事実確認と独自情報の追加は人が担当します。
まとめ
オウンドメディアはトリプルメディアの一種で、自社で運営を行うウェブサイト・ブログ・SNSアカウントなどを指します。オウンドメディアの目的は、潜在顧客と見込み顧客の獲得・顧客ロイヤリティの向上・ブランディングです。
オウンドメディアのメリットは、情報を自由に発信できる・SEOに有効である・広告費用が削減できるなどが挙げられます。一方で、即効性はなく更新し続ける必要があるというデメリットもあります。
オウンドメディアを開始するにあたり、ゴールとペルソナを設定することは非常に重要です。自社でウェブサイト制作が難しい場合は、外注も検討しましょう。





















